「憧れの人」とか「尊敬する人」を真似ることで、今の自分を変えて理想の自分に近づくことができます。心理学の用語でモデリングと呼ばれているテクニックです。
自分の負の行動を変えたり、人として大きく成長したり、立ち居振る舞いを変えたりすることって、気合いだけでやるのは難しいですよね。
でも、脳の働きを上手に使えば、誰にでもできるのです。すでに、ご存知で実践していらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
ただ、一つだけ注意しなければならない重要なポイントがあるので、そのお話しを後半でさせてください。(よくご存知の方は、スクロールして最後2つの章をご覧いただけたら幸いです)
先日、18歳の甥っ子と電車に乗っていた時のことです。彼は一生懸命『イーロン・マスク 未来を創る男』を読んでいました。マスク氏は異能の経営者。
「俺のカリスマなんだ!モデリングしてるよ。」と、大学の起業家コースで学んでいる甥っ子が目を輝かせて説明してくれました。
<<移転しました>>
イーロン・マスク氏は、PayPalの創設者、PayPal売却後は宇宙ロケット、電気自動車(テスラモータズ)、太陽光発電など、未来の世界を創り出すために大金を投じて、常に勝負し続ける豪腕経営者です。
「世界を変えるビジネスをしたい」と、未来に夢を抱く甥っ子のヒーローなのだそうです。この本を書いた作者はすごく文才があるとのことで、「俺の本もこのライターに書いてもらうんだ」とまで言ってました(汗。
このような思い込みが、人の成長を促すのですよね。叔母は「えぇ〜!?」と仰天したけれど、「そうね、それはいいわね」と平静を装って言いました。
どうやら18歳の甥っ子は、大真面目にイーロン・マスク氏をモデリングしているようです。
モデリングの効果があがるのは、ミラーニューロンのおかげ
生まれたばかりの赤ちゃんは、周りの大人のマネをしながら成長していきます。脳のミラーニューロンという脳神経の作用によって、見ている相手の仕草や行動を脳内で真似ながら大きくなっていくのです。
ミラーニューロンとは、高等動物の脳内に備わっている神経細胞の一つです。その名のとおり鏡を見ているかのように、他の人の行動を見ただけで、自分自身も同じ行動をとっているかのように脳が反応するのです。
自分が体験してないのに、誰かの行動を見ただけで(耳から聴いただけで)ミラーニューロンが活性化されて、脳内で同じ動きをしているかのように再現されます。
プロのアスリート達は、怪我をして練習に参加できないとき、試合やプレーをしている動画を見ます。すると、ミラーニューロンが働いて、練習した時とほぼ同じぐらいの効果があると実験でわかっているそうです。
これは、赤ちゃんだけの特権ではなく、青少年や大人になってからもこの脳神経は備わったままなのですから、上手に使って自分自身を、理想の自己像に近づいていくことが可能なのです。
甥っ子は、モデリングしたい相手に関する書籍を読み込んだり、その人の動画やニュースを追いながら、脳内で真似っ子を続けているわけです。
モデリングのやり方
【Step1】
まず、なりたい状態(目標)を決めます。
【Step2】
すでにその域に達している人を思い浮かべてください。「こんな人になりたい」という憧れの人や尊敬する人です。達成したい分野で卓越した人を選ぶといいですね。
【Step3】
その人の立ち居振る舞いとか、喋り方、姿、を観察します(ミラーニューロンを発火させる)。故人であれば、伝記を読んだり資料を集めましょう。
【Step4】
目標へ向かっている行程で問題にぶち当たった時、「その人だったらどうするかな」「その人だったらこんなことを言うかな」などと、その人になったつもりで言動していきます。
憧れの人・尊敬する人は、自分がリーチしたい目標に達するためにモデリングさせてもらっている、という風に捉えてください。
その人の全人格を肯定する必要はなくて、ただ単にモデリングしているのだという認識でいてください。
そうでなければ、モデリングが失敗してしまうかもしれないからなのです。
理想の自分に近づく為の、たった一つの注意点
人間として生まれてきた人は、誰もが完璧ではありません。
ですので、憧れの人も、尊敬する人も、「自分と同じ人間なんだ」と思ってモデリングをすることが大切です。
そうでないと、あたかもその人が「神様」であるかのように思い込んでしまうこともあるからです。
自分も憧れの人もあの人も、人はみんな同じです。
自分がたまたままだその域にリーチしてないから、モデリングしているに過ぎないのです。
私もその昔、英語を習得しようとしてある女優さんをモデリングしていたことがありました。「風とともに去りぬ」という昔の映画にでていたビビアン・リーという女優さんです。
すでに亡くなっている方でしたので、映画を見たり伝記を読んだりしました。
私の目標は、「エレガントな英語の習得」です。ここをはっきりさせました。
ビビアンリーは、重度の躁鬱病で苦しんでいた方でしたので、精神の部分はモデリングするつもりはなく、あくまでも彼女が演じた役柄の「エレガントだけど力強い英語(喋り方)」だけをモデリングしていったのです。
『完璧な人などいない』ということを腑に落としておくことが大事ですよね。
それができていないと、どうなるのでしょうか!?
モデリングが失敗する例
過度に、尊敬しすぎたり、憧れすぎたりすると、途中でモデリング相手の『粗』が見えたとき、興ざめしてしまう恐れがあるのです。
そうなると、モデリングが失敗に終わり、あえなく終了となってしまうのです。
これは「ネガティブラポール」という心理現象によるもの。
「ラポール」とは、親密な信頼関係にあることを指す心理学用語です。主に師弟のような上下関係や支配関係にあるときに起こります。
このラポールは、ある日突然180度逆転することがあるのですが、それを「ネガティブラポール」と呼びます。大好きだったのが大嫌いになってしまうのです。
このようなことが起こらないようにするには、はじめる前に『なぜ自分はモデリングをするのか?』という目的(目標)をはっきりさせてからスタートすることです。
そうすれば、モデリングしていた相手の負の性質や粗が見えたとしても、動じることはありません。
人は皆、同じです。
誰にだってマイナス面とプラス面を持っています。
完璧な人間など存在しないのです。
理想の自己像(自己イメージ)に近づく
イーロン・マスク氏をモデリングしている甥っ子のゆく末も楽しみですが、自分自身もある人をモデリングしていますので期待が膨らみます。
とはいえ、憧れの人を探そうとしても見つからないこと、ありますよね!?
そんな時は、自分がやりたいことですでに成功している人の中から選ぶと良いかもしれません。
趣味のアクセサリー作りを仕事にしたい。
思い通りの庭をつくりたい。
3億円貯めたい。
パリで買い物したい。
やりがいのある仕事に再就職したい。
思いっきり松坂牛を食べたい。
こういった願望をすでに達成している人(してそうなイメージの人)を選んでみてはいかがでしょうか!?
人と人は、いろんな繋がり方ができるものですね。人を介してなりたい自己像に近づいていくこと、とてもステキなことですね。